暗く静まった地下洞穴の、冷たい空気の中。
淫靡な水音と幾人かの荒い息遣い、そして時折呻きとも嬌声ともつかない声が混ざっては消える。
鎧兜や様々な武器で重武装した者もいれば一見それらしい準備には見えない…マントと帽子程度の軽装もいる、それはまったく統一感のない集団であったが、ただひとつ。
彼らが一様に目の色を変えている対象は、闇の法衣を無残に裂かれ、拘束された魔王だった。
固くそそり立った自身を彼の口腔内に押し入れ拙い奉仕を愉しむ者もいれば、下から腰を抱え込んで犯し続ける者もいる。もがくように空を掻く手の中にはまた別の男が自分のものを握らせていて、更にそれだけでは足りないというように、熱く猛った何本もの男性器が身体中に擦りつけられる。
大多数が男ではあるが、中には女も混じっていた。
女勇者特有の凛々しいまでの美貌は男を責め立てる加虐の愉悦に歪み、意思と裏腹に硬度を増した魔王のものを恍惚と頬張っては、時折顔を離して薄い胸に顔を寄せる。固く尖らせた舌先が押しつぶすように乳首を啄ばむ。
痩身がびくびくと跳ね、数ヶ所を責められ短時間で達してしまいかけるも、根元をきつく戒めた縄がそれを封じていた。
ぐっと喉の奥が窄まった拍子、髪を掴んでゆっくりと腰を使っていた男が低く呻く。
「出すぞ。飲め」
喉の奥へ生臭い精液を注がれる。あまりの苦痛に吐き気を催したが、彼らの言葉に逆らうことは許されていない。喉を引きつらせ涙目になりながら、魔王はどうにか多量のそれを飲み込んだ。
「は…かいし……さま」
喘ぐような声を耳聡く聞きつけた男が、冷たい笑みを浮かべた。
名は覚えていない。宴を思わせる熱にただ一人興味を示さず、側の岩に座って魔王の様子を窺っていた僧侶だ。
「なにを今更。解っているでしょう、破壊神は来ないと」
「ふふ…あなたとシャスカがそう交渉してくれたんだものね、ドレン?」
割り広げた足の間にうずくまっていた女勇者が顔を上げ、妖艶に微笑んだ。
(度重なる死闘によってとはいえ)今まで悪の権化としか見ていなかったはずの魔王や破壊神を知ることで、本来敵対する立場であった彼ら…一部の勇者達の心境は僅かながらも変わっていった。
仮初にも勇者であるだけに魔界の思想に傾倒する者こそいなくとも、魔王やその親族、魔物達、時には破壊神に、道ならぬ恋情を抱くものは存外少なくなかったのだ。
そしてある時、彼らは手を組んだ。
今となってはさほど珍しくもない勇者ラッシュかと甘く見ていたのが災いした。魔王に変装した者が手引きをして、何人もの勇者達がダンジョンの奥深くまで潜り込んできた。
気付いたときにはもう遅く、破壊神が渾身の力で生み出した魔物達は大半が駆逐されるか魔封箱に捕らわれていた。そして簀巻きにした魔王を前に、ダンジョンから出て行くでもなく、彼らは要求を突き付けてきた。
魔王と破壊神が自分達の言うことを聞くなら、今回だけは縄を解いて帰ってやる。大人しく身体を開けばよし、そうでないなら…
簀巻きにされようがどうだろうがそんな真似ができるかと突っぱねた言葉に返ってきたのは、僧侶のただ一言。
「そういえば魔王、あなたには可愛い娘さんがいましたね」
だからどう、とは一言も告げられてはいない。だがその裏にありありと意図の透けて見える口調に顔色を変えたのは、魔王一人ではなかった。
娘と仲の良かった破壊神は、歯噛みしながら、しかし進んで要求を呑んだ。
屈辱と怒りと、自分の不甲斐なさに目眩がする。
「なに、あなたの相棒なら心配はいりません。今頃シャスカにたっぷり可愛がられていますよ」
その取引からもう何時間経ったか定かではない。入れ替わり立ち替わり犯され身体を開かされて、それだけでなくドレンが視線をやった方向…厚い岩壁の向こうでは、誰より心酔し敬愛する破壊神が同じ目に合わされているというのに。
シャスカと名乗った魔物ハンターは傷一つつけないと確約したが、どこまで信用できるかなど分からないというのにだ。
自分は娘可愛さにその気遣いに甘えた。破壊神の慈悲に胡坐をかいて、その身を売ったに等しい。
「そんなに睨まないでください、危害は加えないと言ったでしょう」
「信じられる、わけが、「本当ですよ。彼は本気であの破壊神に想い焦がれているそうで…傷付けることは本意ではないと」
「お前は出世目当てのパイプ作りだけどな」
「ええ、勿論」
男たちの一人に茶化され、さらりと認めて笑うその表情は、魔物よりもなお暗い場所に棲む新種のなにかを見るようだった。
「あ、うぁっ!」
途端、気を逸らすなとばかりに一際強く突き込まれて、魔王は堪らず悲鳴を上げた。
その胸元に女勇者がすり寄り、頭を預ける。
「ねえ、でも誤解しないで…私たちは愛してほしいだけなの。
人間じゃだめ、誰も相手にしてくれないから。私たちは力しか取り得のない使い捨てだから。…でも、あなたや破壊神は私たちが何回挑んでも、何度でも真っ向から戦ってくれたわね。無視したり拒んだりしないで、そのたびに、本気で。
…好きよ、魔王」
魔王を膝に乗せて挿し貫いていた錬金術師の男が、耳朶を噛みながら囁く。
「俺はこの女とは逆でな、魔王。最初はお前の娘に用があったんだ。あの小娘、借りるだけ借りて踏み倒しやがったからな。仕置きでもしてやれりゃ御の字だと思ってたが…予想外だ。当人が留守だったことも、魔界の王とあろう者がこう具合がいいってのも。
ちょうどいい。陳腐な言い方になるが…お前の体で払ってもらうか」
笑い混じりの言葉に、横合いから冷静な低音が割り入る。
「それは構わないが早く代われ、キリュウ。長引かせて使い物にならなくなったらどうしてくれる」
「ああ、悪い悪い」
「ふ、ぅ……んくぅ…ぁ……!」
足を抱え上げられがくがくと揺すぶられる傍ら、ハワアドと呼ばれていた白髪の男が再び口内に男性器を押し込む。歯を立てたり吐き出すようなら破壊神を殺す、と事前に言われたために抵抗もままならず、酷く淫猥な音をさせて、魔王は先走りでぬるついたそれに舌を這わせ、一心に吸い上げた。
「上手いものだ…大方あの破壊神にもこうして機嫌を取ってやっているんだろう? 口だけのお前なぞそれ以外使いみちもあるまい」
喋らなくなったら何のためにいるのかわからない、と自分で言ったことはあっても、他者に悪意を持ってそう揶揄されたのは初めてだった。
「私はな、ただお前に吠え面を掻かせてやりたかったのさ。
世界征服だと? ふん…破壊神に頼りきりの狐の分際で、なにを偉そうに」
「憎しみが執着に変わったとでも言うんですか、まあ、よくある感情ですよ。どうせなら彼も呼んであげればよかったかもしれませんね。ほら、宿の片隅で落ち込んでた…」
「あの坊ちゃんか? 来るとも思えないが」
「いや…ずいぶん魔王に恨み事を言っていたからな、案外はまるかもしれんぞ」
俺のように。
なんのこともなさそうに軽口を交わしながら、キリュウは魔王の身体の中に熱い精液を叩きつける。ずるりと引き抜かれても長時間攻め立てられた場所はすぐには閉じず、注ぎ込まれたものを溢れさせた。
女勇者の唇が魔王のものを咥え、見せつけるように舌先で先端を弄りまわす。
ローブ姿の魔法使いの舌が唾液を塗りつけながら肌を味わう。
楽しげに蔑みの言葉をぶつけて、白髪の勇者が口腔内を犯し続ける。
身体を離した錬金術師は、首筋にきつく歯を立てる。
ドレンだけが、その様子を冷徹な笑みと共に見守っていた。
責め苦はまだ終わりそうにない。
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キャストは以下の通り。
・ドレン君→(スキルがヒールだけに)悪役
・基本チキンの金貸しキリュウさん→ヤクザ
・ハワアドさん→言葉責めの鬼畜
・シャスカさん→出せませんでした
で、「女勇者」→あああうさん、「魔法使い」→ゲッコー、「宿の隅で落ち込んでた彼」→すなわち、サトル。
+そのほかのみなさん。