「ええと、その。別に気にしなくていいと思いますよ、バレルさん。(靴のこと結構みんな知ってるし)」
「うっせえ! とっととそいつら連れてけ!」
「はい。…あ、夜も遅いんで何かあげてもいいですか」
「お前なあ、相手は人質だぞ」
「そんなこと言ったって。相手は子供なんですから、ろくにものも食べさせずにおいて具合でも悪くなったらますます手間がかかりますよ」
「……そりゃ困るな。じゃあ、ガキどもの世話はお前がやっとけ」
「了解しました。
ほら、そういうことになったから、あんまりバレルさんを怒らす前にこっちおいで。監視はするけどご飯ぐらい出すよ」
「…ほほー」
「…どうかした?」
「おねいさん、あの足の短いおじさんの彼女?」
「えっ! 貫き通すんだその呼び方……ああうん、まあ、とりあえずそういうふうに呼ばれる関係ではあるかな。あくまで部下だってことは前提だけど、一応ね」
「おおー、やっぱり! ねえねえあんなおマタゲないおじさんやめて、オラに乗り換えなーい?」
「しんのすけ! こんな時になんだ!」
「だってー。風間くんだって気になるでしょ?」
「なるか!」
「あ! でもネネちょっと気になるー! あのおじさん暴力とか振るいそうだし、結婚には向かなさそうよね! やめたほうがいいんじゃない?」
「いま、流行りの、DV」
「……あ、あのねえ。君達…」
「それでもあのおじさんのこと好きだから付き合ってるんじゃないかな? ほら、よく聞くから。やさしいところもあるって…」
「甘いのよマサオくんは!」
「そーだぞ、そんなこと言ってるとズルズル別れるタイミングをなくしちゃうのよねーって母ちゃんが言ってたぞ」
「え…そうなの?」
「そうだよ。そうやってこの人のいいところは自分だけがわかってればいいって思い込んで、付け込まれちゃう現象を共依存っていうんだ」
「…風間くんけっこう詳しいぞ」
「うるさいぞ! ぼ、僕はただ一般論としてだな! おい聞いてるのかしんのすけ!」
「だからー、ネネとしてもやっぱり今のうちに別れたほうがいいかなーって思うの。そもそも聞いておきたいんだけど、あの大人気なくて気が短くてセンスの悪いおじさんのどこが好きなの?」
「それオラも聞きたいなー」
「ピンクの、スーツは…ない」
「しかもごまかしてあの身長だもんねー。女の子としてはハイヒールも履けないのってちょっとイヤだと思わない?」
「え…えーと。どこが好きなんだっけ…そうまでボロボロに言われると、なんかこう、自信が…」
「即答しやがれ!
それから俺ァそんな年じゃねえ、おじさんおじさん連呼すんな! 次言ったら脳天に穴開けるぞガキども!」