ボクはリンと言いますニャ。ポッケ村に新しく来たハンターさんに雇われてる、穀物系の得意なキッチンアイルーだニャ。
ネコバァが「最初こそ雪山で行き倒れてたけんどなぁ、まあそこそこ腕は立つハンターさんたちらしいでなぁ」だとか言っててどうなることかと思ったけど、それがビックリ会ってみたらとってもいい人たちでホッとしましたニャ。
あ、「たち」とわざわざつけたのは意味がありますニャ。ボクの旦那さんはもう一匹、バレルさんというオトモアイルーを連れてますニャ。
なんでもたくさんいる候補の中からボクを雇うことになったのは、バレルさんの意見もずいぶん取り入れてのことだそうで…なんでオトモが旦那さんに対してそんな影響力があるかは知りませんニャ…まあそんなこんなで頼れる口調も相俟って、ボク的には第二の旦那さんと言ったところだニャ。
でも、二人とも料理の腕は最悪の域ですニャ。

「旦那さん、このキレアジまとめたの腐りかけてますニャ」
「うっわ臭! あーあ…これ背ビレだけ切り取って刃物研げないかしら…」
「ハッ、ケチケチすっからだこの貧乏性。キレアジなんざ農場でよく釣れんだからそろそろその溜め込み癖どうにかしやがれ」
「…人のこと言えませんニャ。マタタビとサシミウオ、アイテムボックスの隅にこっそり貯めてたのバレルさんですニャ? サカナの匂いが移ってマタタビ軒並み駄目になってますニャ」
「…! お、俺のマタタビ…」
「こっちの袋に入れたはじけイワシまとめて捨てますニャ…完全に吹き溜まりだニャ」
「あ、それはLv3の通常弾に使おうと…」
「どのみちもう使えないから諦めるニャ! それにこの春夜鯉もそろそろ捨てないと、夏場大惨事になりますニャ」

…しかも二人とも食材管理しちゃだめなタイプだニャ。
むしろ今までキッチンアイルーがいなかった間、この二人がどうやって生きてたのかボクは気になって仕方ないニャ。

「なんていうか、ハンターってそういうとこ無頓着なのが多いのよね。ほらこないだハンター仲間できたじゃない、ブレードって双剣使い」
「ああ、あの全然似てねえイャンクックのパニック走りか」
「そうそうそうあのヘッタクソな宴会芸の。あいつもよく同じようなことやらかしてキッチンアイルーに怒られるんですって。きっと生活力ないのやだらしないのが多いのよ、自分の世話すら満足にできない感じするもの」
自分のこと棚にあげてよくそこまで言えますニャ。
でも結局ボクも気になるから今度統計とってみるニャ。キッチンアイルーの横の繋がりを舐めるなかれ、食材買いに行ったりネコバァを通じたり集落で聞いてみたり、よそのハンターさんの生活ぶりまでわりと筒抜けですニャ!

…うちの旦那さんの恥ずかしい話も筒抜けかと思うと情けなくなりますけどニャ…
うっかり油断してドスファンゴに3タコとか、とてもじゃないけど人には言えませんニャ。


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「テメエなんざ狩りの腕も二流なら人間としちゃ三流だ! 拡散弾はよせっつったろうが!」
「うるさいうるさい! あんたこそ範囲ぐらい考えて爆弾投げなさいよ! 何回私までふっ飛ばせば気が済むわけ、あんたの爆弾強化されてるからムダに痛いの!」
「だいたい今日のクエストはなんだってんだ! ガンガン外しやがって、弾がもったいねえぞ! あれだったら俺が撃ったほうがよっぽどマシだヘボガンナー!」
「ふん、あんたのガタイで私のへビィボウガン撃てるもんならやってみれば! 押し潰されるのがオチだと思うけど!」
「このクソアマ…よっぽどその背中の傷に爪立てられてえみてえだなァ!」
「あら背中を引っ掻くなんて猥褻な発言ねえ! セクハラよバカネコ!」

…やかましいニャ。
あ、ご無沙汰してますニャ。キッチンアイルーのリンですニャ。
え、ケンカ? …ああ。雇われてから旦那さん達毎回のように取っ組み合いのケンカするから、もうそろそろ慣れてきましたニャ。殺意と罵声の飛び交うガチバトルだから最初見たときは色々漏らしそうなほどビビったボクだけど、人間もアイルーも慣れっていうのはとっても大事だニャ。今となっては心配はキッチンの設備や食材に被害が出ることだけニャ。
まあ基本的に素手ゴロで武器はナシだし、投げ技やら締め技やら飛び蹴りぐらいもうビビったりしませんニャ。…って、ボク、意外とオトモアイルーでもやっていけそうな気がするニャ…自分で言うのもなんだけど、
「この大ゲンカに慣れたらババコンガなんてせいぜいかわいいおサルさんだニャ」

「「あ!?」」

しまった聞かれたニャ!

「ババコンガのどこが可愛いのよあんのクソ猿がァ!」
「畜生、怪我治したらリベンジ行くぞ! あんな下品なサルに舐められたまま終われっか!」
「当然! このままじゃ腹立って密林入れないわ!」
「次は俺の爆弾であの毛ピンクどころか真っ赤に染め上げてやらァ!」
「私のタンクメイジで体中に穴を二十は増やしてやるわよ!」

ババコンガにうっかり二連敗の挙げ句顔面にウンコくらったからって、二人ともいくらなんでも怒りすぎニャ。双剣使いでもないのに鬼人化状態なんて初めて見たニャ。
二人が憤然と帰ってきて、黙って真っ先にお風呂に入って、向かい合わせに座ったまましばらく黙ってて、その上唐突に八つ当たり気味のケンカ始めたときは頭がどうかしたのかと思ったけど…でもまあこの元気なら、次は意気揚々とサルの頭でも持って帰ってきそうだニャ。むしろババコンガがちょっと気の毒ニャ。
おっと。あれこれ心配してる暇もなさそうだニャ。

「「リン! 飯!」」